築古木造アパートの表面利回り10%は本当に儲かるのか
地方都市の築13年木造アパート(10戸・表面利回り10%)を保有する会社員大家が、実際のキャッシュフローを公開。表面利回りと手残りのギャップをリアルな数字で解説します。
「表面利回り10%です」と聞いて、儲かりそうだと感じる人は多いと思う。
私自身、初めて2棟目の資料を見たとき、この数字に惹かれた。1棟目の戸建ては表面利回り12%を超えていたから、それと比べると控えめにも見えた。
でも実際に運用を始めてみて思うのは、「10%がどう手元に残るか」は、表面の数字だけでは絶対にわからないということだ。
今回は、私が保有している地方都市の築13年・木造アパート(10戸)の数字を、できるだけそのままの感覚で公開する。表面利回り10%が実際にいくらキャッシュフローを生むのか、リアルな現場の感覚で書いていく。
物件スペックと表面利回りの内訳
まず物件のスペックから。
- 構造: 木造
- 築年数: 13年
- 戸数: 10戸
- エリア: 地方都市
- 物件価格: 8,300万円
- 総事業費: 8,900万円(諸費用込み)
- 満室時年間家賃: 約830万円
- 表面利回り: 10%
表面利回りは「年間家賃 ÷ 物件価格」で出るシンプルな指標だ。8,300万円の物件で年830万円なら、計算上ちょうど10%になる。
ただこれは、満室・経費ゼロ・ローンなしを前提にした数字でしかない。さらに言えば、購入には物件価格以外に仲介手数料・登記費用・不動産取得税・火災保険など諸費用が乗ってくる。私のケースでは諸費用込みの総事業費が8,900万円。表面利回りを総事業費ベースで再計算すると、実質的には9.3%程度まで下がる。
ここから経費・返済・空室損失を引いていくと、手残りはさらに圧縮される。
経費の現実:年間で約160万円
満室家賃830万円から、まず経費が引かれる。
私の物件で発生している主な経費はこんな内訳だ。
- 管理委託費(家賃の5%相当): 約40万円
- 固定資産税・都市計画税: 約25万円
- 建物保険・地震保険: 約12万円
- 共用部の電気・水道: 約8万円
- 修繕費(小修繕・退去時原状回復): 約50万円
- その他(広告費・備品など): 約25万円
合計で年間約160万円。家賃の約2割が経費として消える計算だ。
「経費2割」というのは中古アパート運営のひとつの目安として頭に入れておくといい。新築なら少し下がるし、築古になるほど修繕費が嵩んで上振れしていく。
空室損失:満室稼働は幻想
もうひとつ大きいのが空室損失だ。
10戸ある以上、年間を通して常に満室というのは現実的ではない。退去のタイミング、次の入居者が決まるまでの空室期間、原状回復の工事期間。これらを合わせると、稼働率は90〜95%あたりで推移することが多い。
私の物件だと年間平均で稼働率93%くらい。家賃換算で約58万円が空室損失として失われている。
満室前提830万円から、経費160万円と空室損失58万円を引くと、営業純利益(NOI)は約612万円。物件価格8,300万円に対して**実質利回りは約7.4%**になる。
NOIとは、ローン返済前の手取り収益のこと。物件そのものの収益力を見る指標として使われる。
ローン返済:年間約460万円
ここから次に引かれるのが、ローン返済だ。
- 借入額: 8,500万円
- 金利: 2.5%(変動)
- 期間: 25年
- 自己資金: 500万円
元利均等返済で計算すると、月々の返済額は約38.1万円、年間で約458万円になる。
NOI 612万円 - 返済 458万円 = 税引前キャッシュフロー約154万円。
月で割ると約12.8万円。これが税金を払う前の、純粋な手元残りだ。
太陽光収入が効く
実はもうひとつ、収入源がある。屋根に乗っている太陽光発電だ。
買取価格は新築当時の固定価格買取制度(FIT)の価格で、月々おおよそ7万円の売電収入がある。年間で約84万円。
これを加味すると、税引前キャッシュフローは 154万円 + 84万円 = 約238万円。月20万円ほどになる。
築古アパートに太陽光が乗っていると、賃料以外のキャッシュフローが上乗せされる。これは収益安定化の意味でかなり大きい。FIT期間中という前提付きだが、購入時の判断材料としては重要な要素だった。
「儲かる」の定義
ここまでの数字を整理するとこうなる。
| 項目 | 年間金額 |
|---|---|
| 満室家賃 | 830万円 |
| 経費 | △160万円 |
| 空室損失 | △58万円 |
| NOI | 612万円 |
| ローン返済 | △458万円 |
| 太陽光収入 | +84万円 |
| 税引前CF | 約238万円 |
「儲かるかどうか」の答えは、何を基準にするかで変わる。
- キャッシュフローで見る: 月20万円弱の手残りは、本業の給与とは別収入として悪くない
- 元本返済で見る: 25年で8,500万円の元本が完済される。これは別の意味での「資産形成」
- 自己資金回収で見る: 投下した自己資金500万円を、税引前CFで割れば回収期間は約2年強
- 時間軸で見る: ローンが終わった26年目以降は、家賃収入の大半がそのまま残る
ただし注意点もある。築年数が経つほど修繕費は確実に増えるし、家賃は基本的に下落していく。今の数字が25年続くわけではない。
表面利回り10%は「悪くない」が、それだけでは足りない
地方都市・築13年・木造で表面利回り10%という条件は、私の感覚ではまあまあいい数字だと思っている。新築や築浅でこの利回りは出ない一方、もっと築古なら12〜15%が狙える。
ただ「利回りが高ければいい」という発想で物件を選ぶと、必ずどこかで詰まる。
実質利回り、キャッシュフロー、修繕の見込み、出口戦略——このあたりまで含めて見て、手残りで何円残るかを判断軸にするのが、2棟目以降の物件選びだと思っている。
次の記事では、この物件についている太陽光発電の収益と落とし穴について、もう少し踏み込んで書くつもりだ。FIT終了後にどうするかも含めて、リアルな話を残しておきたい。
さる
副業禁止のサラリーマン大家 / 法人スキーム実践中
30代の会社員。築古戸建で個人購入 → 妻名義法人で2棟目を取得。 法人融資で3棟分契約解除という授業料を払った経験から、 融資・節税・物件管理の「数字と戦略」をリアルに発信しています。
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