妻名義の合同会社で法人化した理由|設立費用15万円の内訳と議決権を半々にしなかった話
副業禁止サラリーマン大家が妻名義で合同会社を作った実費15万円の内訳と、株式会社ではなく合同会社を選んだ3つの理由。司法書士に依頼して気づいた議決権設計の落とし穴も書きました。
副業禁止の会社員として本業を続けながら、妻名義の合同会社で2棟目を持っている「さる」と申します。
不動産投資をしている人と話していると、たまに聞かれます。
「なんで株式会社じゃなくて合同会社にしたんですか?」
この質問、SNSでも定期的に流れてきます。「会社員大家なら株式会社のほうが信用される」「いや合同会社で十分だ」――ネット上の意見はバラバラで、何を信じればいいのか分かりにくい論点です。
私は迷った末に合同会社を選びました。設立にかかった実費はちょうど15万円ほど。司法書士に依頼した理由、株式会社を選ばなかった理由、そして妻と私の議決権をどう設計したか。今回はそのあたりを正直に書きます。
事業会社や上場を見据えるスタートアップの方には当てはまらない話もあると思いますが、サラリーマン大家として法人化を検討している人には、たぶんそのまま参考になります。
結論:合同会社にしてよかった、と今でも思っている
先に結論。
我が家は 妻を代表社員とする合同会社 を作り、そこで2棟目を購入しました。設立費用は15万円ほど、月の維持コストは均すと2万円弱(顧問税理士込み)。1年経った現時点で、株式会社にしておけばよかったと感じた瞬間は、正直一度もありません。
合同会社のデメリットでよく言われる「信用がない」「上場できない」という話は、こと不動産賃貸業に関してはほぼ無関係です。融資審査でもネガティブには扱われませんでしたし、入居者は会社形態なんて見ていません。むしろ、設立コストと運営の身軽さを取った判断は、副業禁止サラリーマンの妻名義スキームとは相性が良かったと感じています。
株式会社ではなく合同会社を選んだ3つの理由
1. 設立コストが10万円以上違った
まずはお金の話から。
株式会社の設立に最低限かかる実費は、ざっくり以下です。
- 登録免許税:15万円(最低額)
- 定款認証手数料:3〜5万円
- 定款印紙代:4万円(電子定款なら0円)
電子定款を使っても、登録免許税15万円+認証手数料5万円で、実費だけで20万円ほど。司法書士報酬を乗せると、しめて25万〜30万円コースが普通です。
一方の合同会社は、
- 登録免許税:6万円(最低額)
- 定款認証:不要
- 定款印紙代:4万円(電子定款なら0円)
実費は6万円スタート。司法書士報酬を乗せても15万円前後で収まります。
差額にして10万円〜15万円。「たかが10万」と思うかもしれませんが、法人を立ち上げた直後の現金10万円は、法人口座の運転資金として地味にありがたい金額です。儲かってもいない法人の最初の現金10万円は、とにかく手元に残しておきたい――これが個人的にいちばん効いた感覚でした。
2. 決算公告の義務がない
株式会社は毎年決算公告(会社の決算内容を一般に公表する手続き)を出さないといけません。実態として守っていない零細法人も多いですが、本来は義務です。
電子公告にしても官報掲載にしても、ランニングで年に数千〜数万円かかります。さらに「公告したかどうかを誰かに見られる」というのが個人的には地味に嫌でした。
合同会社にはこの公告義務がありません。サラリーマン大家として静かに法人を回したい身としては、「公にする情報が少ない」ほうが安心できます。
3. 役員任期の更新がいらない
株式会社は役員に任期があります(最長10年)。任期満了のたびに重任登記が必要で、登記費用が1万円。10年後に「あ、忘れてた」をやらかすと過料が飛んできます。
合同会社には任期がありません。社員(出資者)は基本的にずっと社員のまま。サラリーマン大家のような“放置寄りの法人”には、この任期なしが本当にラクです。10年後の自分はきっと忘れているので、忘れて怒られるリスクがそもそも存在しないほうがいい。
設立費用15万円の内訳(実額ベース)
具体的に何にいくら払ったか。我が家のケースを公開します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 登録免許税 | 60,000円 |
| 司法書士報酬 | 85,000円 |
| 印鑑セット(実印・銀行印・角印+住所ゴム印) | 26,000円 |
| 合計 | 171,000円 |
電子定款にしてもらったので、印紙代の4万円はゼロ。司法書士は知人の紹介で、相見積もりは取っていません(ここはちょっと反省点)。一般的な相場は8〜12万円なので、たぶん中央値あたりだと思います。
印鑑はハンコヤドットコムで実印・銀行印・角印・住所のゴム印をセットで注文しました。安いところなら同じ4本セットを1万円台で買えるはずですが、印影の好みと納期で選んだ結果、ここに落ち着いています。住所ゴム印は、登記後に届く請求書や賃貸借契約書の押印で地味に使うので、最初から作っておくと後がラクです。法人用印鑑を専門に扱う通販なら会社印鑑ドットコムも選択肢のひとつです。即日発送対応で、法人設立のスケジュールが詰まっているときにも使いやすいです。
「自力でやれば6万5,000円で済むんじゃないの?」と言われそうなので、補足します。
司法書士に頼んだ理由:定款で揉めないため
合同会社の設立そのものは、freeeやマネーフォワードの設立ツールを使えば自分でも出来ます。実費だけなら6万5,000円ほど。
それでも私が司法書士に頼んだ理由は1つ。
定款設計で詰まったからです。
合同会社の登記そのものは、書類を整えるだけの作業です。難しくない。難しいのは「定款をどう書くか」のほう。
合同会社には株式という概念がありません。代わりに 「社員」と「持分」と「議決権」 という3つがあって、これを定款でどう設計するかで、後々の運営が決まります。
- 社員(出資者)が複数いるとき、議決権はどう分けるのか
- 業務執行は誰がやるのか、登記簿に誰が載るのか
- 持分譲渡(持分の売り買い)にどう制限をかけるのか
- 相続が起きたときに持分はどうなるのか
このあたりを、ネットの雛形どおりに作ると、後で困ります。実際、最初に自分で組もうとした定款は、士業の人に見せたら「これだと将来揉めますよ」と言われました。
8万5,000円で「将来揉めない設計を一緒に考えてくれる」なら、私はその金額を払う価値があると判断しました。
議決権を半々にしなかった話
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
我が家は妻名義の法人ですが、出資のほぼ全額を出しているのは私です。出資比率は私99:妻1、議決権も私が99% という設計にしました。妻は代表社員として登記簿に載り、私は業務執行に関わらない側の社員として裏に回っています(この扱いは別記事でじっくり書きます)。
設立前の打ち合わせで、司法書士からこう言われました。
「夫婦で半々の議決権はやめておきましょう。 何かあったときに会社が止まります」
仲がいいから半々でも大丈夫、という話ではありません。意見が割れたとき、議決権が50:50だと社員総会で決議が取れない。決議が取れないと、銀行口座の重要変更も、決算の承認も、次の物件の購入決議もできない。会社が動かなくなるんだそうです。
これは持分比率がきっちり半分の中小企業で、実際に役員間の対立が起きて経営が止まった事例を、その先生がいくつも見てきての言葉でした。
夫婦は他人より揉めないとは限らない。むしろ、お金の話は他人より生々しく揉める可能性すらある。「いま仲がいい」を理由に半々にすると、揉めたときに法人ごと人質になります。
合同会社は 議決権を出資比率と切り離して定款で自由に設計できる のが、株式会社にはない強みのひとつです。出資比率と議決権の比率を別々に書けるし、「○○の事項は社員Aの単独決議で足りる」みたいな細かい設計も定款で自由にできる。
我が家は 議決権の99%を私(夫)に寄せました。表に立つのは妻(代表社員)ですが、最終的にどう動かすかを決めるのは私側、という設計です。融資・物件購入・大規模修繕といった重い意思決定で、夫婦の意見が割れたときに止まらないようにするための保険です。出資と議決権を別々に設計できる、これが合同会社の地味な良さです。
株式会社にしておけば、と思った場面はあるか?
ここまで合同会社推しで書いてきましたが、フェアに後悔ポイントもひとつだけ。
外注先や取引先に法人名刺を渡すとき、たまに 「合同会社って初めて見ました」 と言われます。年配の経営者には、まだ「合同会社=怪しい」のイメージが残っていると感じます。
ただ、不動産賃貸業で名刺を出す相手は、信金担当者、不動産業者、税理士、司法書士、リフォーム業者あたり。彼らは合同会社を毎日のように見ているので、何の違和感も持たれませんでした。融資審査でも「合同会社だから減点」のような扱いはなかったです。詳しくは 2棟目の融資をどう通したか のほうに書きました。
業種によっては「株式会社じゃないと取引してもらえない」みたいな話があるそうですが、サラリーマン大家の業務範囲では、合同会社で困った場面は今のところゼロです。
設立前にもうひとつ決めておきたいこと
設立費用15万円の話を読んで「思ったより安いな」と感じた人もいると思います。ただ、設立費そのものより、設立前に決めるべきことのほうが、後の運営に効いてきます。
- いつ法人を作るのか(タイミング)
- 登記住所をどこにするのか
- 誰を代表にするのか(妻名義 / 個人名義)
- 議決権をどう設計するのか
このうち「いつ作るか」については、サラリーマン大家が法人化するベストタイミング のほうに、私が1棟目で個人購入→2棟目で法人化に踏み切った判断軸を書いています。
「登記住所」は副業禁止サラリーマンには地味に重い論点です。自宅に法人登記すると、最悪の場合は本業会社の人事に法人登記簿を見られて、副業バレの起点になりかねない。私はバーチャルオフィスを選びましたが、その判断プロセスは 妻名義法人の登記住所、結局どこにする問題 に詳しく書いています。
まとめ:副業禁止サラリーマン大家には合同会社が向いている
長くなったので最後に。
副業禁止サラリーマンの妻名義スキームで法人を作るなら、合同会社は素直に良い選択肢だと思います。
- 設立コストが安い(実費15万円前後)
- 公告義務がない(静かに運営できる)
- 役員任期がない(放置に強い)
- 議決権を出資比率と切り離せる(夫婦半々を回避できる)
逆に、外部からの増資を受けたり、上場を目指したり、対外的な信用力で大きく勝負したい業種だと、株式会社のほうが向いています。
司法書士費用を惜しむなら自分で登記しても問題ありません。ただ、定款だけは一度プロに見てもらったほうがいい。8万5,000円は「将来揉めないための保険料」だと思って、私は払いました。
さる
副業禁止のサラリーマン大家 / 法人スキーム実践中
30代の会社員。築古戸建で個人購入 → 妻名義法人で2棟目を取得。 法人融資で3棟分契約解除という授業料を払った経験から、 融資・節税・物件管理の「数字と戦略」をリアルに発信しています。
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