不動産投資は青色申告と法人化どっちが得か|1棟目は個人・青色10万控除のまま、2棟目から法人にした理由
1棟目を個人の青色申告、2棟目を妻名義法人にした副業禁止の会社員大家が、青色65万控除の落とし穴と法人化の分岐点、二本立てを選んだ理由を実体験で解説します。
不動産投資を続けていると、どこかで必ずぶつかる問いがある。「このまま個人の青色申告で粘るか、それとも法人化するか」だ。
結論から書く。**拡大していくつもりなら法人。ただし、1棟目の個人・青色申告は無理に動かさず、そのまま持ち続ける。**私はこの「個人と法人の二本立て」に落ち着いた。青色か法人かの二者択一で悩んでいた時期の私に、いま伝えたいのはこれだ。
私は副業禁止のサラリーマン会社員で、30代後半、妻と子ども2人、地方都市で暮らしている。1棟目は個人名義の築古戸建、2棟目は妻名義の合同会社で買った木造アパートだ。個人と法人、両方を回してみて分かったことを、実際の数字と一緒に正直に書いていく。
私は「青色か法人か」で悩むのをやめた
多くの人は、青色申告と法人化を天秤にかけて悩む。どちらが得か、いつ切り替えるべきか。私も同じように悩んだ。
でも実際にやってみて分かったのは、この二つは対立するものではない、ということだ。個人の1棟目には1棟目の役割があり、法人には法人の役割がある。無理にどちらか一方に寄せる必要はなかった。
拡大の器として法人を作り、そこで新しい物件を買っていく。一方で、最初に個人で買った小さな貸家は、動かすコストのほうが高いのでそのまま個人に残す。結果として二本立てになった。これは戦略的に美しく設計したというより、一つずつ現実的な判断を積み重ねたら自然とそうなった、というのが本当のところだ。
物件を持つより先に、開業届と青色申告を出していた
順番の話からしたい。私は物件を買う前に、先に開業届と青色申告承認申請を出している。
戸建を買おうと動き始めた前の年、税務の本を読んでいたら「青色申告は事前に申請が要る」「とりあえず出しておいて損はない」と書いてあった。それだけの軽い動機だ。青色にすると控除がいくら取れるとか、そういう細かい損得は正直あまり見ていなかった。無料だし、出しておけば後で使えるらしい、くらいの感覚で提出した。
このときの私は、青色申告のうまみを完全に誤解していた。「青色にすれば65万円控除できる」と、なんとなく思い込んでいたのだ。実際に確定申告のシーズンが来て、その思い込みが崩れることになる。
青色65万円控除は「事業的規模」が要件だった
青色申告の最大のウリとされる65万円控除には、実は条件がある。事業的規模であることだ。
事業的規模というのは、不動産賃貸でいうと「5棟10室基準」と呼ばれる目安がある。アパートなら10室以上、戸建なら5棟以上、これを満たして初めて「事業として営んでいる規模」と認められ、65万円の控除(電子申告等の要件込み)が使える。逆に、これに満たない規模だと青色でも控除は10万円にとどまる。
私の1棟目は貸家1軒だ。当然、事業的規模には全く届かない。だから私が実際に取れた控除は10万円だった。65万円ではない。
正直、最初にこれを知ったときは肩透かしを食らった気分だった。「青色にしておいたのに、たった10万円か」と。この10万円の薄さは、規模の小さいうちは青色のうまみがほとんど効かない、という現実を突きつけてくる。
私の1棟目がどんな物件かは「内覧なしオーナーチェンジで築古戸建を450万円で買った話」に詳しく書いた。築46年・450万円・家賃5万円・返済4万円で月1万円のキャッシュフロー、という規模感だ。この規模で青色65万控除を狙うのは、そもそも土俵が違う。
副業禁止の会社員には「規模未満」が別の意味を持つ
ただ、ここで私が言いたいのは「青色は損だ」という話ではない。むしろ逆だ。
副業禁止の会社員である私にとって、「事業的規模に満たない」ことは、二重の意味を持っていた。
一つは、いま書いた通り青色控除が10万円止まりになる要件。これはデメリット側だ。
もう一つは、副業規定との関係だ。副業規定の中身は会社によって本当にバラバラなので断定はできないが、一般に「事業的規模に満たない不動産賃貸」は、副業というより資産運用の範囲として扱われやすいと言われる。給与以外の所得が大きく膨らめば、住民税の額から会社に気づかれるリスクも上がる。私は貸家1軒という規模を、あえてそのラインの内側に収まると理解して選んでいた面がある。
つまり私にとって、貸家1軒を個人・青色10万円控除で持ち続けることは、控除の面では薄くても、副業禁止という縛りの中では合理的な形だった。ここは自分の勝手な理解に頼らず慎重に考えるべきところで、副業規定と不動産所得の関係については「不動産投資は副業でなぜバレないのか」に、私が整理した論点をまとめてある。会社の規定は必ず自分で確認してほしい。
法人を作った分岐点は、転売で入った200万円
では、なぜ2棟目のタイミングで法人化に踏み切ったのか。きっかけははっきりしている。ある物件の転売だ。
戸建Bの次に、私は2棟目候補として1,000万円台の別の戸建(戸建A)を契約まで進めていた。手付金も払っていた。ところが契約後に業者から買い取りの打診が入り、複数社を競らせた結果、私は一度も所有権を持たないまま物件を業者に流し、紹介料として200万円を受け取ることになった。この経緯は「契約後に流した戸建Aと紹介料200万の話」に書いている。
問題は、この200万円をどう受け取るかだった。個人が雑所得で受け取ると、本業の給与と合算されて累進課税で重くのしかかる。本業の年収レンジによっては、4割近くが税金で消える計算だった。それなら、この200万円を受け取る器として法人を作ってしまおう——これが、私が法人設立に動いた直接のきっかけだ。拡大のために満を持して作った、というより、目の前の200万円を守るために作った、というのが正直な順番になる。
そうして妻名義の合同会社を設立した。私は副業禁止なので自分は代表に立てず、フルタイム勤務の妻を代表にした。設立費用は約15万円。紹介料の200万円はこの法人の口座で受け取り、売上として計上している。そして結果的に、この「紹介料の受け皿」として生まれた法人が、そのまま拡大の器になった。のちにこの法人で、築13年・木造・利回り10%・太陽光収入付きのアパート(8,300万円の物件に8,500万円のオーバーローン)を買い増していくことになる。
法人化のタイミングは一般に「2棟目を買うと決めたとき」と言われるが、私の場合は結果的に、この戸建Aの紹介料を受け取る局面がそのまま設立のタイミングになった。その判断の詳細は「サラリーマン大家の法人化タイミング」にまとめている。設立の書類作成をオンラインで完結させたいなら、GVA 法人登記のようなサービスで登記コスト自体はかなり圧縮できる。私が設立した頃よりも、いまのほうが設立のハードルは下がっている。
戸建Bの「法人成り」を見送った理由
法人を作ったとき、当然こう考えた。「個人で持っている1棟目も、法人に移したほうがいいのでは」と。これを法人成り(個人所有の物件を法人へ移転すること)という。
結論としては、見送った。理由は単純で、割に合わないからだ。
物件を個人から法人へ移すと、それは売買と同じ扱いになる。登録免許税がかかり、不動産取得税もかかる。金額の細かいところは税理士に任せたので私は正確には覚えていないが、要は「移すだけで新しくコストが発生する」ということだ。
私の1棟目は家賃5万円・返済4万円、月のキャッシュフローが1万円という小さな物件だ。この規模の貸家を法人に移すために、登録免許税や不動産取得税を払い、手続きの手間までかける。移転後に得られる節税メリットと天秤にかけると、どう考えてもコストのほうが重い。
だから戸建Bは個人に残したまま、新しい拡大は法人でやる。この二本立てが、私にとっては一番無駄がなかった。「法人化=全部を法人に集約」ではない。動かす価値のあるものだけ動かせばいい。法人化そのものにもコストと制約はあって、そのあたりは「法人化して分かった5つのデメリット」に正直に書いた。
二本立ての実務は、思ったよりシンプルだった
個人と法人の二本立てと聞くと、申告が二重になって面倒そうに思えるかもしれない。実際、私も最初はそう身構えていた。
確定申告は、当初は自分でやろうとしていた。会計ソフトを使えば個人分くらいは自力でいけるかと考えたのだが、法人の決算が絡んでくると話は別だ。結局、法人の決算をお願いしている税理士に、個人分(戸建B)の確定申告もまとめて依頼することにした。顧問料は月15,000円で、この中で個人と法人の両方の申告を見てもらっている。日々の記帳はスプレッドシートで自分で管理し、まとめて税理士に渡す形だ。
二本立てにしても、窓口が税理士一本に集約されると、実務の煩雑さはかなり消える。この安心感は、本業を持ちながら不動産を回すうえで大きい。税理士に何を任せられるか、費用相場や探し方は「不動産投資で税理士は必要か」にまとめた。まだ税理士がいないなら、税理士ドットコムのような無料の紹介サービスで、不動産に強い税理士を複数比較しておくといい。個人と法人を両方見られる人を選ぶのがポイントだ。
個人に残した戸建Bの出口も、二本立てだからこそ気楽に構えられる。無理に売り急ぐ必要はないので、完済まで持ち続けて、最後はオーナーチェンジで売るか、更地にして土地として売るか。そのくらいのゆるさで考えている。
まとめ:二択で悩むより、役割を決めて併用する
「青色申告で粘るか、法人化するか」という問いに、私なりの答えを出すとこうなる。
拡大していくつもりなら、器としての法人は早めに作ったほうがいい。でも、最初に個人で買った小さな1棟目は、無理に法人へ動かさず、役割を決めて併用すればいい。
私の場合、貸家1軒は青色でも10万円控除しか取れなかった。控除の面では薄い。それでも、副業禁止の会社員にとっては「事業的規模に満たない」規模感が別の意味で都合がよく、法人に移すコストも見合わなかった。だから個人に残した。一方で、本気で規模を広げるための器は法人に用意した。
青色か法人か。二者択一で消耗するより、それぞれの役割を見極めて併用する。二本立ては折衷案のように聞こえるかもしれないが、実際に両方を回している私にとっては、これが一番現実的で、一番ストレスのない形だった。
いま同じ問いの前で立ち止まっている人がいたら、「どちらか」ではなく「どちらも、役割を分けて」という選択肢があることを、頭の片隅に置いておいてほしい。
さる
副業禁止のサラリーマン大家 / 法人スキーム実践中
30代の会社員。築古戸建で個人購入 → 妻名義法人で2棟目を取得。 法人融資で3棟分契約解除という授業料を払った経験から、 融資・節税・物件管理の「数字と戦略」をリアルに発信しています。
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