団信なしで8,500万を借りた|信金の融資に団体信用生命保険はなかった
妻名義法人で2棟目アパートに8,500万の融資を受けたが、信金の商品に団信はなかった。連帯保証は私一人。1年経った今も代替の生命保険を掛けていない、という穴を正直に書きます。
副業禁止の会社員として本業を続けながら、妻名義の合同会社で2棟目を持っている「さる」と申します。
2棟目の地方都市・築13年木造アパート10戸に対して、信用金庫から8,500万円・金利2.5%(変動)・25年の融資を受けています。融資が通るまでの経緯は法人融資を5行8回断られて通った話に書きました。
今日書くのは、その融資に団信(団体信用生命保険)が付いていないという話です。
正確に言うと、付けなかったのではありません。その信金の融資商品に、団信という選択肢がそもそもなかった。そして私は、団信がない分を埋める生命保険も掛けないまま、1年以上この8,500万円を運用しています。
穴が空いていることを自覚しながら、埋めていない。読んで気持ちのいい話ではないと思いますが、これから法人で融資を引く人には、たぶん一番早く伝えたほうがいい論点です。
結論:団信なし・代替の保険もなし。穴は空いたまま
先に現状を全部書きます。
- 8,500万円の融資に団信は付いていない(信金の商品に用意がなかった)
- 連帯保証は私(夫)一人。妻は代表社員だが連帯保証には入っていない
- 団信の代わりになる生命保険は掛けていない
- 保険会社に見積もりを取ったことすらない
「団信がないなら生命保険で埋めるのが定石ですよね」と言われたら、返す言葉がありません。分かっていて、やっていない。理由は後半に正直に書きます。
そもそも団信は、どの融資にも付いてくるものではない
団信は、借りている人が亡くなったり高度障害になったとき、保険金で残債が返済される仕組みです。民間の住宅ローンでは加入が実質必須の商品が多く、「借りたら団信が付くもの」という感覚を持っている人は少なくないと思います。私もそうでした。
ところが不動産賃貸業の融資になると、話が変わります。アパートローンでは団信が任意加入(金利に上乗せする形)というケースがあり、事業性融資やプロパー融資ではそもそも商品に団信が用意されていないことがある。私が最終的に通った信金がまさにそれでした。
契約の段階で担当者に確認したところ、答えはシンプルでした。この融資には団信の取り扱いがない、と。選べないなら悩みようもなく、そのまま契約に進んでいます。
振り返って思うのは、私はこの論点を、融資が通るかどうかの話が終わるまで一度も検討していなかったということです。5行に当たって8回断られている最中は、通すことだけを考えていました。否決され続けている期間は視野が狭くなる。通すための情報は必死に集めるのに、通った後の設計が抜ける。私の場合、それが団信でした。
妻名義法人で団信がないと、構造がどうなるか
ここからが本題です。単に「団信がない」だけなら、生命保険を掛ければ済む話です。私のスキームでは、もう一段ややこしくなります。
私の法人の設計はこうです(詳しくは妻名義の合同会社で法人化した理由)。
- 代表社員は妻(副業禁止の会社員である私は、登記簿に名前を出せない)
- 議決権の99%は私側に寄せてある
- 妻は無報酬。業務もほとんど執行していない
- 借入8,500万円の連帯保証は私一人が入っている
連帯保証を私一人にできたのは、こだわった点でした。複数の銀行で「代表(妻)の連帯保証も必須です」と返され続けた中、最後の信金だけが実態を見て私単独の保証で稟議を通してくれた。妻に借金を背負わせたくない、という希望が通った形です。
その判断は今も後悔していません。ただ、団信がないという条件と組み合わせると、意味が変わってきます。
私に万一のことがあったとき、8,500万円の債務は法人に残ります。団信がないので、保険金で消える仕組みはありません。そして連帯保証の債務は、一般に相続の対象になるとされています。つまり残された家族は、法人の債務と、私の連帯保証債務の両方に向き合うことになる。
もちろん物件はあります。家賃も入っています。法人が回っていれば返済は続けられる建付けです。ただ、それを回すのが誰なのか、という問題が残る。妻は正社員として本業を持っていて、これまで法人の実務はほぼ私が回してきました。管理会社との調整も、信金への月次報告も、決算の資料づくりも私です。
「保険で残債が消えるかどうか」以前に、運転する人がいなくなった法人を、誰がどう動かすのか。ここが空白のままになっています。
妻に万一のときの穴と、対になっている
この論点、実は片側だけ以前に書いています。妻名義法人のデメリットの5番目に挙げた「代表社員(妻)に万一があったときの備えが抜けていた」がそれです。代表がいなくなった法人は動かず、副業禁止の私は代表として表に立てない。あれは妻側の穴の話でした。
今回書いているのは、その反対側です。連帯保証人であり、実務を回していて、返済原資である給与を稼いでいる私が抜けたときの話。
整理すると、私の法人にはこういう穴が2つ空いていることになります。
| 抜ける人 | 起きること | 現状の備え |
|---|---|---|
| 妻(代表社員) | 法人が動かなくなる。私は代表として表に立てない | なし(司法書士に相談予定のまま) |
| 私(連帯保証人・実務担当) | 団信がないので債務は残る。回す人がいない | なし |
書き出してみて、我ながらひどいなと思います。片方が抜けても片方が抜けても止まる設計を、両方無防備なまま走らせている。
副業禁止の会社員が妻名義で法人を作るスキームは、税務や登記の面では合理的な選択だと今も思っています。ただ、可動性を配偶者1人に預け、返済力を自分1人に預けるという構造上、この2つの穴は最初からセットで存在していたわけです。設立時に司法書士と離婚のケースは詰めたのに、死亡のケースは両方向とも抜けていました。
なぜ、いまだに保険を掛けていないのか
正直に書きます。理由は3つあって、どれも褒められたものではありません。
1つ目は、優先順位が完全に「現金を積むこと」に寄っていたから。
融資が通った直接の要因は、自己資金を500万円積む腹を決めたことでした。この経験があまりに強烈で、「手元の現金を減らす支出」に対する抵抗が今も強い。保険料は毎月出ていく固定費です。頭では必要だと分かっていても、現金を減らす方向の意思決定にブレーキがかかる。節税より現金、と考えるようになったのと同じ流れです(節税を優先して融資評価を落としかけた話)。
2つ目は、法人で掛けるのか個人で掛けるのかを整理できていないから。
法人が契約者になって私に保険を掛ける形もあれば、個人で入って相続でカバーする形もあります。経理も税務も変わるはずで、税理士に相談すべき話です。ただ決算のたびに聞きたいことが他にあって、毎回後ろに回っている。「次に聞こう」を3回くらい繰り返しています。
3つ目は、単純に、自分が死ぬ前提で計算するのが気持ち悪かったから。
これが一番大きいかもしれません。金利が4%になったらDSCRがどうなるかは平気で試算するのに(DSCRで見るポートフォリオ)、自分がいなくなった場合の試算はしていない。リスクの計算はできるのに、自分が消えるリスクだけ計算していない。書きながら、3つ目が本丸だとはっきりしてきました。
団信がない融資を引く前に、確認しておくこと
私が確認しそびれたことを、これから借りる人向けに整理しておきます。融資が通るかどうかの話に夢中になる前に、一度目を通してもらえたらと思います。
1. その商品に団信があるかを、契約前に聞く
「アパートローンだから付くはず」と思い込まない。事業性融資では用意がないことがあります。聞けば一言で返ってくる質問です。
2. ある場合は、上乗せの条件と健康告知の内容を確認する
任意加入型は金利に上乗せされる形が一般的です。上乗せ分がキャッシュフローをいくら削るかは、月々の返済額で試算すれば出ます。団信を付けた場合と付けない場合のCFを、数字で並べてから決めるのが筋だと思います。私はこの比較すらしていません。
3. 法人で借りる場合、被保険者が誰になるかを確認する
これは私のケースで一番効く論点でした。法人が債務者なら、団信の被保険者は代表者になるのが一般的とされています。私の設計だと被保険者は妻です。返済を支えているのは私の給与と実務なのに、保険がかかるのは妻側。仮に団信のある商品を選んでいたとしても、私が抜けたときの穴は塞がっていなかった可能性がある。
「団信があるから安心」ではなく、誰が抜けたときに何が消えるのかまで見ないと意味がない、というのが今回の学びです。
4. 団信がないなら、代替手段を「融資の一部」として同時に決める
ここが私の最大の反省です。融資の契約と保険の検討を別のイベントにした瞬間、保険のほうは無期限に後ろへずれます。融資条件を詰めるのと同じテーブルで、穴の埋め方まで決めてしまう。そうしないと、私のように1年経ちます。
これから私がやること
記事を書くために自分の状況を並べたら、先送りの構造がはっきりしました。順番に片付けます。
- 金銭消費貸借契約書を読み直す(団信の記載がないことの再確認と、期限の利益喪失条項の確認)
- 残債と、売却した場合に回収できそうな金額を並べて試算する(保険で埋めるべき差額を数字にする)
- 税理士に、法人契約と個人契約のどちらが筋かを聞く(次の面談で最初に出す)
- 司法書士に、妻側の穴とあわせて相談する(デメリット記事で「宿題」と書いたまま止まっている件と同じ場で片付ける)
2番までは手元だけで終わります。ここまでやれば「いくら足りないのか」が数字になるので、3番以降の会話が具体的になる。
なお火災保険で代理店選びを失敗した経験から、保険は商品より「誰に相談するか」で結果が変わると思っています。生命保険も、収益物件と法人契約の両方が分かる相手に当たらないと、また保留にして終わる気がしています。
よくある疑問
Q. アパートローンに団信は付きますか?
商品によります。任意で加入できる(金利に上乗せ)ものもあれば、事業性融資のように団信の取り扱い自体がないものもあります。私が借りた信用金庫は後者でした。金融機関ごとに違うので、契約前に直接聞くのが確実です。
Q. 団信なしでも融資は受けられますか?
受けられます。私自身が団信なしで8,500万円を借りています。団信の有無と審査の可否は別の話で、見られているのは物件の評価と返済能力です(断られた8回の内訳)。
Q. 法人で借りると、団信は誰にかかりますか?
一般には法人の代表者が被保険者になるとされています。私のように代表(妻)と、実質的な返済力を持つ人(私)が別人の設計では、団信があっても守りたい側を守れない可能性があります。スキームを組む段階で確認すべき論点です。
Q. 団信の代わりは、生命保険でいいのですか?
一般的にはそう言われます。ただ、法人契約か個人契約かで税務も経理も変わるので、税理士に確認したほうが早いと思います。私はまだ確認できていません。
まとめ:融資が通ったあとの設計を、通す前に決めておく
団信がない融資を引いたこと自体は、間違いだとは思っていません。その信金以外に道はなかったし、あの条件(8,500万・2.5%・25年)を出してくれたのはあの1行だけでした。
問題は、団信がないと分かった時点で、代わりの手当てを決めなかったことです。融資が通った高揚感の中で、「あとで考える」に分類してしまった。そして1年以上、そのままにしている。
副業禁止の会社員が妻名義の法人で物件を持つ設計は、登記簿にも住民税にも名前を出さずに済む、よくできた形だと思っています。ただその形は、私が働き続けていて、妻が代表でい続けることを前提に組み上がっている。前提のどちらかが崩れたときの絵を、私はまだ描けていません。
同じスキームで2棟目を狙っている方は、融資の話がまとまったタイミングで、担当者にこの一言だけ聞いてください。
「この融資に団信はありますか。ない場合、皆さんどう備えていますか」
私はこれを聞きませんでした。聞いていれば、たぶん1年前に片付いていた話です。
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