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妻名義法人のデメリット5つ|1年運用して分かった、面倒より怖いのは構造だった
法人スキーム

妻名義法人のデメリット5つ|1年運用して分かった、面倒より怖いのは構造だった

副業禁止の会社員が妻名義の合同会社で2棟目を持って1年強。日々の手間はほとんどないのに、融資・議決権・万一の備えという構造側にデメリットが残りました。実体験で5つ書きます。

副業禁止の会社員として本業を続けながら、妻名義の合同会社で2棟目(築13年木造アパート10戸)を持っている「さる」と申します。

妻名義法人は、副業禁止サラリーマン大家にとってほぼ定番の解になっています。私もこの形でしか2棟目に進めませんでした。

ただ、「デメリットは何ですか」と聞かれたときに、世の中の記事が挙げるのはたいてい日々の手間の話です。妻に書類を書いてもらう、銀行に同行してもらう、説明が面倒——といった類のもの。

1年強回してみた実感として、そこはほとんど問題になりませんでした。妻からのクレームはゼロ、日常の負担も「たまに書類にサインしてもらう」程度です。

にもかかわらず、デメリットはちゃんとあります。日常の手間ではなく、構造の側に出るというだけで。今回は、実際に効いた5つを書きます。

結論:面倒くささはほぼゼロ。効くのは構造のほう

先に結論だけ。

我が家の設計はこうなっています(詳細は「業務を執行しない社員で登記に名前が出ない仕組み」に書きました)。

  • 代表社員:妻(フルタイム正社員・登記簿に名前が出る)
  • 業務執行しない社員:私(出資99%・議決権99%・登記簿に名前は出ない)
  • 役員報酬:妻には支払っていない
  • 実務:ほぼすべて私

この形で1年強。日々の運用で「妻名義にしたせいで面倒だ」と感じた場面は、正直ほとんどありません。

代わりに効いたのが、以下の5つでした。

デメリット1. 融資で、当たれる銀行が絞られる

これが最大です。

法人融資では、代表者が連帯保証に立つのが基本です。我が家の代表は妻。つまり銀行の標準的な進め方だと、連帯保証は妻に来ます。

実際、地銀でこう言われました。

「法人代表は奥様ですので、連帯保証は奥様にお願いすることになります」

構造としては、まったく正しい。ただ私の家庭の事情として、妻に連帯保証で借金を背負わせたくなかった。不確実性のあるビジネスのリスクを、家計を支えてくれている側にだけ負わせるのは違うと思っていました。

そこで「私が連帯保証に入る形にできませんか」と打診したのですが、

  • ある銀行では「代表でない方の連帯保証は受けられない
  • 別の銀行では「代表と非代表の双方を連帯保証に入れる形なら可」

という回答で、「私だけが保証に入る」を受けてくれる金融機関がなかなか見つかりませんでした。

最終的に通った信用金庫では、連帯保証は私一人が入る形で稟議が下りました。ただしそこに辿り着くまで1年4ヶ月、5行8回の否決を挟んでいます(経緯は「法人融資を5行8回断られて通った話」に書きました)。

否決の理由はエリアや積算などいろいろでしたが、妻名義スキームが銀行の標準形とズレていること自体が、当たれる先を減らしていたのは間違いありません。ここは妻名義法人の構造的なコストです。

デメリット2. 法人口座の開設に、思ったより時間がかかる

こちらは軽いほうの話です。

法人口座は、審査に落ちたわけではありません。ただ開設まで待たされました。新設法人であること、実務を回しているのが代表者本人ではないことなど、銀行から見ると確認したいことが多いのだと思います。

物件の決済や家賃の入金口座は、スケジュールから逆算して動きます。「口座がまだできていない」は地味に効くので、法人を作ったらすぐ口座の申し込みに動くべきでした。ここは順番の問題で、私は少し呑気に構えていました。

デメリット3. 妻が正社員だと、役員報酬を出せない

我が家は妻に役員報酬を出していません。理由は節税を捨てたからではなく、妻の本業を守るためです。

妻はフルタイムの正社員です。ここで役員報酬を払うと、住民税の通知から妻の勤務先に法人収入が伝わるルートが新しく開きます。社会保険の扶養判定の議論も出てくる。

一般に法人化のメリットとして語られる「家族への所得分散」は、妻名義法人かつ妻が正社員という組み合わせでは、最初から使えません。無報酬にしておくのが一番シンプルでした。

法人化そのもののデメリット(均等割・税理士費用など)は「法人化してわかった5つのデメリット」にまとめていますが、この「所得分散が使えない」は妻名義に固有の話です。

デメリット4. 支配権は肩書きではなく、議決権の数で決まる

ここがいちばん怖い部分です。

設立時、司法書士にはっきり言われました。

夫婦で半々の議決権はやめておきましょう。 何かあったときに会社が止まります」

そのとき、こんな話を教えてもらいました。

仲のいい3人で会社を立ち上げた。Aが代表取締役、Bが仕事を取ってくる役、Cは株式の過半数を持っている平社員。順調に伸びて資本が厚くなってきた頃、Cが2人を切って会社ごと持っていった。ずいぶん揉めたものの、株式を多く持っているCに支配権があった——という話です。

肩書きは代表取締役でも、支配権は持分の数にある。

離婚についても、同じ枠組みで説明を受けました。細かい言い回しまでは覚えていませんが、趣旨としては「離婚と会社は別。妻が代表社員というだけで、実質的な支配権は議決権の数で決まる」というものでした。

だから我が家は、出資99:1、議決権99%を私側に寄せています。表に立つのは妻、最終的にどう動かすかを決めるのは私、という設計です(この判断は「妻名義の合同会社で法人化した理由」にも書きました)。

逆に言えば、ここを設計せずに「妻名義」だけ真似すると、法人ごと相手側に残る形になり得るということです。ネット記事で見る「妻名義」という言葉には、この粒度が入っていません。仲がいいかどうかとは別の問題として、設立時に必ず詰めるべきところだと思います。

デメリット5. 代表社員に万一があったときの備えが、抜けていた

正直に書きます。ここは私の穴です。

離婚のケースは司法書士と具体的に話しました。にもかかわらず、妻に万一があったとき(死亡)のことは、当時まったく考えていませんでした

冷静に考えると、代表社員が不在になった法人は、そのままでは動きません。そして私は副業禁止の会社員なので、代表として表に立てない。「登記簿に名前を出さないために妻を代表にした」という設計が、そのまま身動きの取れなさに反転します。

離婚は「関係が壊れる」話なので想像しやすく、死亡は「起こらない前提」で頭から抜けていた。妻名義法人は配偶者1人に法人の可動性を全部預ける設計なので、ここは本来セットで詰めておくべき論点でした。

これは現在進行形の宿題です。次に司法書士と会うときの持ち込みテーマにしています。なお、この穴には反対側もあります。連帯保証人であり実務を回している私が抜けたときの話で、こちらは融資に団信が付いていないという条件と重なって、さらに厄介です(団信なしで8,500万を借りた話)。同じスキームを組む人には、設立の打ち合わせで「代表に万一があったらどうなりますか」を必ず聞いてくださいと伝えたい。私は聞き漏らしました。

それでも、もう一度作るなら同じ設計にする

ここまで5つ書きましたが、ゼロからやり直せるとしても、私は同じ設計で作ります

副業禁止の会社員が法人で物件を持つ以上、登記簿に自分の名前を出さない形は動かせません。そのうえで議決権99%・無報酬・業務を執行しない社員という組み合わせは、いまのところ穴が少ない。

言い換えると、上の5つは「妻名義をやめる理由」ではなく、妻名義でやるなら最初に潰しておくべきチェック項目です。私は4つ目を潰せていて、5つ目を落としました。これから作る人は、両方潰してから設立に進んでください。

妻名義法人のデメリットについてよく聞かれること

Q. 妻名義にすると融資は不利になりますか? 不利というより、当たれる金融機関が減るという表現が近いです。法人融資は代表者が連帯保証に立つのが基本なので、「代表=妻」だと妻に保証を求められます。妻に保証させたくない場合、「代表でない者だけの保証」を受けてくれる先を探すことになり、選択肢が絞られます。私は1年4ヶ月かかりました。

Q. 妻が正社員でも妻名義法人は組めますか? 組めます。我が家の妻もフルタイム正社員です。ポイントは役員報酬を出さないこと。報酬を出すと住民税から妻の勤務先に伝わるルートが開きます。ただしその代わり、法人化のメリットとしてよく挙がる所得分散は使えません。

Q. 議決権は半々にしてはいけないのですか? 少なくとも私は司法書士に「やめておきましょう」と言われ、99%を自分側に寄せました。理由は、意見が割れたときに決議が取れず会社が止まるからです。夫婦の仲の良し悪しではなく、法人が動かなくなるかどうかの問題として設計する話だと理解しています。

妻名義法人そのものの作り方は「業務を執行しない社員で登記に名前が出ない仕組み」に、妻への切り出し方は「法人化を妻に即決OKしてもらった話」に書いています。設立費用の実額と合同会社を選んだ理由は「妻名義の合同会社で法人化した理由|設立費用15万円の内訳」にまとめました。

デメリットを先に知ってから組んだほうが、確実にいい設計になります。私が落とした5つ目まで含めて、参考にしてもらえればと思います。

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さる

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副業禁止のサラリーマン大家 / 法人スキーム実践中

30代の会社員。築古戸建で個人購入 → 妻名義法人で2棟目を取得。 法人融資で3棟分契約解除という授業料を払った経験から、 融資・節税・物件管理の「数字と戦略」をリアルに発信しています。

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