妻を社長にした会社の融資、銀行が見たのは夫の給料だった|審査で出した書類と聞かれたこと
妻を社長にした合同会社で融資を申し込んだら、面談の相手も提出書類も夫の私が中心でした。源泉徴収票と確定申告書は何年分か、「この年収なら大丈夫」でも落ちた理由、「勤め先は大丈夫か」への答え方を実体験で書きます。
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法人の代表は妻です。だから銀行と話すときも、主役は妻になるのだろうと思っていました。
私は副業禁止の会社員で、自分の名前では法人の代表になれません。そこでフルタイム正社員の妻を社長にした合同会社を作り、その法人で2棟目のアパートを買いにいきました。融資が通るまでにかかったのは1年4ヶ月、5行に8回断られています。
その1年4ヶ月で分かったことがあります。妻の会社の融資なのに、銀行が見ていたのは私(夫)でした。面談で担当者が話す相手も、出すように言われる書類も、ほとんどが私の側でした。
「妻を社長にする」で検索すると、出てくるのは節税の話がほとんどです。融資の審査で夫がどう見られるのかを書いた記事は、私が探した範囲ではほぼ見つかりませんでした。この記事では、審査で出した書類、言われたこと、聞かれたことを、覚えている範囲で書きます。
なお、金融機関の名前は出しません。断り文句を全部並べた記事は「法人融資を5行8回断られて通った話」にあります。
結論:妻の会社なのに、面談も書類も私が中心だった
先に結論を書いておきます。
- 面談で担当者が話していた相手は、ほぼ私だけだった
- 私個人の書類として、源泉徴収票と確定申告書を出した。何年分かは銀行によって違い、3年分を求めたところもあった
- 妻の個人書類を求めるかどうかは、銀行によって違った
- 複数の銀行で「この年収なら大丈夫」と言われた。それでも、物件と保証人の形で断られた
- 「勤め先は大丈夫なのか」と聞かれた
登記簿の上で代表になっているのは妻です。ただ、銀行から見て「この法人のお金の出どころは誰か」「何かあったとき返せるのは誰か」を考えると、答えは私になります。出資の大半を出しているのも、連帯保証に入っているのも私です(妻は連帯保証に入っていません)。審査がそちらに寄っていくのは、振り返れば自然なことでした。
手続きの上では、窓口は登記上の代表である妻です。銀行も「奥様の法人への融資」として扱います。ただ、面談で中身を詰める相手と、審査で確かめられる数字は、私の側でした。
ただ、動き出す前の私はそう思っていませんでした。
動く前は「妻の収入を見られる」と思っていた
法人を作ったとき、私は、審査で中心に見られるのは妻の収入や経歴だと思っていました。代表は妻なのだから、銀行が「この会社の社長はどういう人か」を確かめるのは当然だろう、と。私は業務を執行しない社員として一歩下がった位置にいる、というつもりでした。
実際に銀行を回ってみると、担当者が話す相手はほぼ私でした。出すように言われる書類も、私個人のものが中心でした。
妻を社長にしたのは、私が表に出ないためです。それなのに、融資の場では私がいちばん前に出ることになる。ここは、法人を作る前には想像できていなかったところです。
私がどういう立場で法人に関わっているか(出資、議決権、業務執行しない社員)は、「妻を社長にしたあと、夫はどういう立場になるのか」に書いています。
出した書類:源泉徴収票と確定申告書。何年分かは銀行ごとに違った
私個人の書類として出したのは、次の2つです。
- 源泉徴収票(本業の給料の分)
- 確定申告書(個人名義で持っている戸建の家賃収入の分)
何年分出すかは、銀行によって違いました。少ない年数で済んだところもあれば、3年分を求めたところもあります。
妻の個人書類は、求める銀行と求めない銀行がありました。どういう基準で分かれていたのかは、正直よく分かっていません。
確定申告書の「時期」で契約が1本流れた
書類の話で一番痛かったのは、確定申告書の時期です。
個人で戸建を持っているので、私は毎年、家賃収入の確定申告をしています。法人の融資でも、この個人の確定申告書は大事な参考資料として扱われました。
ある物件で融資を申し込んだのが、ちょうど確定申告書が新しくなる直前の時期でした。前の年の申告書はある。でも銀行が見たいのは直近の数字です。私のほうでもまだ数字が固まっておらず、出せる資料が中途半端になりました。稟議に時間がかかっている間に売主が待てなくなり、売買契約は解除になりました。
経緯は「隣県の物件を3棟見送った理由」に書いています。
妻の会社の融資なのに、夫の確定申告の時期が原因で物件を1本逃したことになります。
「この年収なら大丈夫」と言われたのに、通らなかった
私の給料について銀行から言われたのは、主に年収の水準のことでした。
そしてこれは、複数の銀行で前向きな反応でした。「この年収なら大丈夫」という趣旨のことを、1つの銀行ではなく、いくつかの銀行で言われています。
ところが、そう言ってくれた銀行のなかにも、最後に断ってきたところがありました。理由は大きく2つです。
1つ目は物件です。積算評価(土地と建物の値段から銀行が見積もる担保の価値)が出ない、購入価格が積算に対して高すぎる。年収の話とは関係なく、物件そのものの評価で止まりました。
2つ目は保証人の形です。ある地銀には、こう言われました。
「奥様が代表ですので、奥様が連帯保証に入っていただく形になります」
私は妻に連帯保証を背負わせたくなかったので、ここで話が止まりました。夫の年収を「大丈夫」と見ていても、代表が妻である以上、保証は代表に来る。法人融資の基本の形です。
一方で、別の地銀からは、私の属性に対して借入総額が大きい、という趣旨のことを言われました。
このときの銀行が、私の年収そのものをどう見ていたのかは覚えていません。同じ給料を見ても、「大丈夫」と言う銀行と、借入額とのバランスを問題にする銀行がありました。
振り返ると、夫の給料は審査の入口で確認されるもので、通るかどうかを決めるものではなかったのだと思います。入口は通っても、その先の物件と保証人の形で落ちる。「年収は大丈夫」と言われた銀行で断られたときは、そういう落ち方でした。
「勤め先は大丈夫なのか」と聞かれた
もうひとつ、審査のなかで聞かれたのが、勤め先の副業禁止のことです。
担当者から、勤め先は大丈夫なのか、とはっきり確認されました。
銀行が気にするのは分かります。もし私が会社から問題にされて職を失えば、審査で「大丈夫」と見ていた年収の前提が崩れるからです。
私は2つのことを説明しました。
1つは法人の形です。代表は妻で、私は業務を執行しない社員であること。役員報酬は私にも妻にも出していないこと。登記の上でも、私は法人の運営をする立場にはなっていないこと。
もう1つは就業規則の中身です。私の勤め先の就業規則は何を副業として禁じているのか。どこまでがダメで、どこからが資産運用の範囲なのか。そのうえで、今の形がどこに当たると考えているのかを話しました。
基本的には、この説明で話が先に進みました。
振り返って思うのは、「たぶん大丈夫だと思います」では通らないということです。法人の形と就業規則の両方を、自分の言葉で説明できる状態にしておく必要があります。銀行に聞かれて初めて就業規則を読み返すようでは遅いと思います。
副業禁止の会社員が家族の法人で不動産を持つときの対策は「副業禁止でも不動産投資はバレない?」に、業務執行しない社員の登記の仕組みは「業務執行しない社員という手」にまとめています。
最後に通った信金で、給料がどう効いたのかは分からない
最終的に融資が通ったのは、1年ほど月1回通っていた信用金庫でした。連帯保証は私一人という形です。
この信金が私の給料をどう使ったのか、たとえば「家賃で返せない月が出たときの支え」として見たのか、「連帯保証人の支払い能力」として見たのか。正直、分かりません。
ひとつ言えるのは、この物件は家賃だけで返済が回る計算だったことです。満室家賃に対する返済比率(家賃収入のうち返済に回る割合)は約55%です。細かい収支は「築古木造アパートの利回り10%は儲かるか」に書いています。
だから私は、「給料があるから通った」というより「物件で返せる計算が立っていて、給料はその確認だった」のだと受け取っています。ただ、これは私の受け止め方で、稟議書の中身を見たわけではありません。
信金に通って何が変わったかは「信金と月1で会い続けたら変わったこと」に書きました。
これから妻を社長にする人へ:夫の側で用意しておくもの
妻を社長にする形で融資を考えている人に、私がやり直せるなら最初から揃えておくものを書いておきます。どれも、妻ではなく夫の側の準備です。
① 源泉徴収票と確定申告書を3年分
少ない年数でいい銀行もありますが、3年分を求める銀行もあります。最初から3年分をまとめておけば、どの銀行にもそのまま出せます。
② 確定申告の時期と、物件探しの時期を重ねない
個人で物件を持っていて確定申告をしている人は、申告書が新しくなる直前に融資を申し込むと、出せる資料が中途半端になります。買付を入れる前に、手元の申告書がいつのものかを確認しておいたほうがいいです。
③ 就業規則を読んで、自分の言葉で説明できるようにしておく
「勤め先は大丈夫か」は、聞かれるものだと思っておいたほうがいいです。法人の形(誰が代表で、自分はどういう立場か)と、就業規則の中身の両方を話せるようにしておく。私はこの2つを説明して、話が先に進みました。
④ 保証人の形を、器を作る前に銀行に聞く
これは私ができなかったことです。代表が妻だと、連帯保証は妻に来るのが基本です。妻に保証を背負わせたくないなら、その希望を受けてくれる金融機関があるかを、法人を作る前に当てておくべきでした。
まとめ
妻を社長にした会社の融資で、銀行が見ていたのは夫の私でした。
- 面談の相手はほぼ私、書類も源泉徴収票と確定申告書が中心
- 「この年収なら大丈夫」は複数の銀行で言われたが、それで通るわけではなかった
- 落ちた理由は、物件の評価と、代表が妻であることによる保証人の形
- 「勤め先は大丈夫か」は聞かれる。法人の形と就業規則の両方で説明した
「妻を社長にすれば融資は通る」とは、私には書けません。書けるのは、私の場合は夫の給料が入口で確認され、そのあと物件と保証人の形で5行に8回断られ、最後の信金で通った、というところまでです。
妻を社長にしても、融資の審査で夫が表に出なくて済むわけではありません。むしろ一番前に立つことになります。法人を作る前からそのつもりで、夫の側の書類と説明を準備しておくことを勧めます。
よくある質問
Q. 妻が社長の法人でも、夫の源泉徴収票は必要ですか?
私の場合は求められました。源泉徴収票と、個人で持っている戸建の確定申告書です。出資の大半を夫が出していたり、夫が連帯保証に入ったりする形なら、夫の収入を確認されるのは避けられないと思います。何年分かは銀行によって違い、3年分を求められたこともあります。
Q. 夫が副業禁止の会社員だと、融資で不利になりますか?
「勤め先は大丈夫なのか」とは聞かれました。法人の形と就業規則の中身の両方を説明し、基本的にはそれで話が進みました。説明できる準備がないと、担当者も稟議を書きにくいと思います。
Q. 妻の収入や勤め先は見られますか?
銀行によって違いました。妻の個人書類を求めたところもあれば、求めなかったところもあります。私が当たった範囲では、面談も書類も夫が中心でした。
Q. 2棟目の融資に、年収はいくら必要ですか?
明確な基準はないと思います。私は複数の銀行で「この年収なら大丈夫」と言われましたが、それでも物件と保証人の形で断られています。年収は入口の条件で、最後に効くのは物件で返せるかどうかだったと感じています。詳しくは「不動産投資の2棟目で融資が通らない」に書きました。
自分で銀行を回って疲れたら、融資代行プロという選択肢
妻を社長にした法人の融資は、当たれる金融機関がどうしても絞られます。「どの銀行なら保証人の形を相談できるのか」「自分の書類で足りないものはないか」を自分だけで確かめていくのは、会社員には時間的にきついところがあります。
法人・個人事業主向けの融資相談を無料で受けられる融資代行プロPRに、法人の形と手元の書類を持ち込んで「どの金融機関が現実的か」を整理してもらうだけでも、回り道は減ると思います。私のように1年4ヶ月かけて5行を当たり直す前に、選択肢として知っておく価値はあります。
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