築13年の木造アパートに25年融資はなぜ出たか|残耐用年数9年の壁を信金本部稟議で超えた話
残耐用年数9年の木造アパートに融資期間25年。9年ローンなら年返済1,056万円で満室家賃830万円を超え破綻していた。耐用年数超えの融資期間が信金の本部稟議で出た理由を実数字で書く。
2棟目に買った木造アパートは築13年だった。木造の法定耐用年数は22年。つまり残耐用年数は9年しかない。
それに対して、信用金庫が出した融資期間は25年だった。
「耐用年数の残りに合わせて融資期間を決める」という原則からすれば、9年の物件に25年。約3倍の期間が出たことになる。この期間が出なければ、私はこの物件を買えていない。買えたとしても、確実に破綻していた。
2棟目の融資が通るまでの経緯そのものは「2棟目で融資が通らない|2回否認→信用金庫で承認させた実体験」に書いた。今回はその中で一番質問が多い「なぜ耐用年数を超えた期間が出たのか」だけを縦に掘る。
もし9年ローンだったら、家賃収入より返済が多い
まず「期間が出なければ破綻していた」の意味を、数字で見てもらいたい。
物件と融資の条件はこうだ。
- 物件:木造・築13年・10戸・購入価格8,300万円
- 満室時年間家賃:約830万円(表面利回り10%)
- 借入額:8,500万円、金利2.5%(変動)
この条件で、融資期間だけを変えて元利均等の年間返済額を試算すると、景色が一変する。
| 融資期間 | 月返済 | 年間返済 | 満室家賃830万円との比較 |
|---|---|---|---|
| 9年(残耐用年数) | 約88万円 | 約1,056万円 | 家賃を226万円超過。即死 |
| 15年 | 約56.7万円 | 約680万円 | NOI約612万円を下回り赤字 |
| 20年 | 約45万円 | 約540万円 | 手残り年72万円。薄氷 |
| 25年(実際) | 約38.1万円 | 約458万円 | 手残りが残る |
NOI(営業純利益=家賃から経費・空室損失を引いた、返済前の手取り)は私の物件で年約612万円。この数字の出どころは「築古木造アパート利回り10%って本当に儲かる?」で実額公開している。
見ての通り、残耐用年数どおりの9年ローンでは、満室でも家賃収入より返済の方が多い。15年でもNOIを下回る。20年でようやく黒字になるが、空室が少し増えれば飛ぶ水準だ。25年で初めて、まともなキャッシュフローが出る。
つまりこの物件は「利回り10%だから買えた」のではない。25年という融資期間が出たから買えた。融資期間は金利よりも先に、物件の成立そのものを決める。
「法定耐用年数」と「貸せる年数」は別物
ここで前提を整理しておく。木造22年という法定耐用年数は、もともと税務上の減価償却のための年数であって、「建物があと何年使えるか」を示すものではない。
ただ、多くの金融機関はこの法定耐用年数を融資期間の上限の目安に使う。残9年なら9年ローン、という発想だ。画一的な審査基準で動く金融機関ほどこの傾向が強く、地方の築古物件はここで門前払いになる。
一方で、金融機関によっては経済的耐用年数——実際にあと何年賃貸物件として稼働できるか——で見てくれるところがある。木造でも、きちんと管理された物件なら30年、40年と稼働している実例はいくらでもある。私の信金が25年を出せたのは、突き詰めればこの「法定ではなく実態で見る」判断をしてくれたからだ。
ただし、向こうから勝手にそう見てくれるわけではない。実態で判断してもらうための材料を、こちらが揃える必要がある。
25年が出た理由を自分なりに分解すると4つ
承認の決め手を信金が教えてくれるわけではないので、ここからは私の解釈だ。ただ、振り返って「これが効いたはず」と思える材料は4つある。
1. 物件側の実績:13年間ほぼ満室で稼働していた
この物件は前オーナーの運営で13年間ほぼ満室だった。築13年で残耐用9年の「古くなりつつある物件」ではなく、「13年間収益を出し続けてきた実績のある物件」として資料を組めた。エリアの賃貸需要を肌で知っている地元の信金には、この実績がそのまま通じる。引き継ぎ時に何を確認したかは「13年満室だった築古アパートを引き継いで、私が確認したこと」に書いた。
2. 借り手側の実績:1棟目の返済履歴
1棟目の戸建てで返済実績があった。金額は小さくても「貸して、約定どおり返ってきた」という履歴は、期間を延ばすリスクを取ってもらう材料になる。
3. 関係の実績:月1で信金に通い続けていた
物件を持ち込む前から、この信金とは月1ペースで接点を作っていた。シミュレーション資料を持参して、決算や確定申告の状況も共有していた。「初対面の客の築古物件に25年」は無理でも、「素性の分かっている客」なら稟議の書きようがある。この関係構築の中身は「信金と月1で会い続けたら変わったこと」にまとめている。
4. 器の整備:法人スキームが先にできていた
融資を受けたのは妻名義の合同会社で、紹介料収入の計上実績がある状態だった。個人の副業枠ではなく、事業として継続する前提の器が先にあったことは、25年という長期の貸出先として見たときの安心材料になったはずだ(仕組みは「妻名義法人で不動産投資する仕組み」参照)。
4つ並べて気づくのは、どれも「物件を見つけてから慌てて用意できるものではない」ということだ。期間の壁は、物件持ち込みの瞬間ではなく、その前の1〜2年で勝負がついている。
担当者の「難しい」で引かない。期間こそ本部稟議
実務面でひとつ強調したいのは、耐用年数超えの期間は支店の担当者レベルでは出せないことが多い、という点だ。
私のケースでも、担当者の最初の反応は「難しいですね」だった。ここで「ですよね」と引いたら9年か、よくて15年の提示で終わっていたと思う。私は「本部に持っていってもらえませんか」と頼み、収益性・返済実績・地域の賃貸需要をまとめた資料で稟議を上げてもらった。
担当者が難しいと感じることと、金融機関として否決することは別物だ。特に融資期間は、支店の裁量を超えた論点になりやすいからこそ、本部稟議まで持ち込む価値がある。否認され続けた時期も含めた金融機関との消耗戦は「法人融資を5行8回断られて通った話」に書いた。
25年融資のトレードオフも書いておく
いいことばかり書くとフェアではないので、長期融資の代償も挙げておく。
- 総支払利息は増える。 期間が3倍になれば、利息の累計も大きく膨らむ。
- 残債の減りが遅い。 売却時に「残債が売値を上回る」リスクを長く抱える。築古木造の出口は土地値勝負になりやすいので、買値の時点で土地値との距離を見ておく必要がある。
- 金利上昇に長くさらされる。 私の2.5%は変動だ。25年の間に金利局面は確実に変わる。
それでも私は25年を選んだ。理由は最初の表に戻る。短い期間では、そもそもキャッシュフローが回らないからだ。手残りを内部留保に積んで次の自己資金を作る戦略(CF積み上げ戦略)は、返済比率を抑えた長期融資が前提になっている。
よく聞かれること
Q. 木造の築古でも、融資期間は何年まで出る? 金融機関による、としか言えないが、私の実例として「残耐用年数9年に対して25年」は地元信金の本部稟議で出た。法定耐用年数で機械的に切る金融機関と、経済的耐用年数や賃貸実績で見る金融機関があり、後者を探して材料を揃えるのが現実的な攻め方だ。
Q. 耐用年数オーバーの融資はどこに相談すればいい? 私の経験では、物件エリアに支店のある信金・地銀だ。エリアの賃貸需要を知っているほど、紙の上の耐用年数より実態で判断してくれる余地がある。大手の画一的なアパートローンは、地方×築古×耐用年数超えの組み合わせにシビアなことが多い。
Q. 期間と金利、どちらを優先すべき? 築古木造に関しては期間だと思う。上の試算の通り、金利が多少下がっても期間が9年や15年では物件自体が成立しない。金利交渉は買った後でもできるが、期間は契約時にほぼ決まる。
融資の壁に当たっている方へ
耐用年数超えの期間は、金融機関選びと持ち込む材料で結果が大きく変わる。自分で何行も回る時間が取れない、断られた理由が分からないという段階なら、法人・個人事業主向けの融資相談を無料で受けられる融資代行プロのような窓口に、物件と属性を一度ぶつけてみるのも手だ。
融資・物件選定・税務まで体系的に学んで材料を自分で組めるようになりたい方には、ファイナンシャルアカデミーの不動産投資スクールが無料体験セミナーから入れる。本部稟議に乗る資料は、結局のところ収支とリスクの説明力で決まる。
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30代の会社員。築古戸建で個人購入 → 妻名義法人で2棟目を取得。 法人融資で3棟分契約解除という授業料を払った経験から、 融資・節税・物件管理の「数字と戦略」をリアルに発信しています。
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