300万円の空室戸建を、捨て値の指値でも見送った話|家賃5万・リフォーム150万で採算が合わない理由
築50年・300万円の空室戸建。水回り全滅でリフォーム150万、表面利回りは13%超。それでも50万円の指値を入れ、売主が200万まで下げても買わなかった。低家賃×築古再生の採算と見送りの判断を実体験で書きます。
不動産投資の記事は「買った話」ばかりが並ぶ。でも実際の物件探しは、買わなかった物件のほうが圧倒的に多い。私もそうだった。
今日書くのは、私が大家デビューする前、まだ1棟も持っていなかった頃に見送った戸建の話だ。地方都市の築50年・3DK、価格は300万円。安かったし、机上の利回りは悪くなかった。それでも私は買わなかった。しかも、売主が値段を下げてきてもなお手を出さなかった。
「なぜ買わなかったか」を数字と一緒に残しておくと、同じように安い築古戸建を前にして迷っている人の判断材料になると思う。見送りも立派な投資判断だ、というのが今の私の実感だから。
不動産屋巡りで紹介された、築50年・300万円の空室戸建
当時の私は、とにかく不動産屋を回っていた。ポータルサイトを眺めるだけでなく、地場の不動産屋に顔を出して「築古の戸建を探している」と伝えて回る。そうやって紹介してもらった一つが、この物件だった。
スペックはこんな感じだ。
- エリア: 地方都市
- 築年数: 約50年
- 間取り: 3DK
- 状態: 空室(オーナーチェンジではない)
- 価格: 当初400万円 → 値下げ後300万円
惹かれたポイントは、正直に言えば2つだけだった。ひとつは安さ。300万円なら、立地によっては土地値で取れる可能性がある。もうひとつは再生後の利回り。空室の築古を直して貸し出せば、表面利回りは二桁に乗りそうに見えた。
「これでデビューできるかもしれない」。築古再生の王道の入り口に、私も立っていた。
現地で見た「水回り全滅」
机上の魅力と、現地の現実は別物だ。実際に見に行って、私の頭の中の電卓は一気に重くなった。水回りが、見事に全滅していたのだ。
- 風呂: タイル張りの在来工法。浴室の中にバランス釜(風呂内設置型のボイラー)がある古いタイプ。今どきの入居者にユニットバスなしで貸すのは厳しい。
- キッチン: 設備そのものがボロボロ。さらにキッチン周りの床がベコベコと凹む。これは表面の問題ではなく、床下の根太や大引きが湿気か水漏れで傷んでいるサインだ。
- トイレ: 段差の上に和式。洋式化は前提で、配管から見直す必要がありそうだった。
風呂・キッチン・トイレの3点がそろって駄目で、しかも床が抜けかけている。**「3点フル交換+床組みの補修」**という、築古再生の中でも重いコースだった。
水回りが見送り判定にいちばん効く、という話は別記事の「内覧20件で4つに絞った戸建チェックポイント」でも書いた。この物件は、その教訓を地で行く一棟だった。
自分で引いたリフォーム見積もり:それでも150万円
私はこのとき、業者から正式な見積もりを取っていない。取るまでもなく、自分の頭の中で総額が読めなかったからだ。
それでも、ざっくりとは試算した。ユニットバスやトイレの設備自体は、伝手をたどって譲り受ける算段もしていた。設備代を浮かせて、なるべく工事費を圧縮する前提だ。それでも、最低でも150万円はかかるというのが当時の私の見立てだった。
ここがこの物件のいやらしいところで、床がベコベコということは、開けてみないと本当の総額が分からない。床を剥がしてみたら根太が広範囲で腐っていた、配管も全部やり直し——そうなれば150万では到底収まらない。安く見える物件ほど、こういう「開けてからの上振れ」が怖い。
数字を組むと、一見「悪くない」
総額を置いてみる。
- 物件価格: 300万円
- リフォーム(自己想定): 150万円
- 総事業費: 450万円
- 再生後の想定家賃: 月5万円(年60万円)
- 表面利回り: 約13.3%
数字だけ見れば、表面13%超。地方の築古戸建としては「悪くない」どころか、むしろ良く見える部類だ。ここで飛びついてしまう気持ちは、私にもよく分かる。
でも、この物件には数字に表れない致命傷が2つあった。
致命傷は、駐車場と床
ひとつは駐車場。地方都市の戸建は、車が前提だ。駐車場が確保できない物件は、それだけで客付けが一段重くなる。この戸建は駐車スペースが狭く、まともに車を停められない。庭は広かったのだが、周囲の道路と段差があって、一箇所からしか敷地に入れない。車を庭に回すのも難しい構造だった。
地方都市で駐車場が弱い、というのは「家賃5万円が本当に取れるのか」という前提そのものを揺るがす。想定家賃が絵に描いた餅なら、表面13%という数字も意味を失う。駐車場を物件選びの軸の一つに入れている理由は、まさにこういう物件に出会ってきたからだ。
もうひとつは、さっき書いた床だ。ベコベコの床は、総額の上限が読めない。「最大いくらかかるか」が見えない物件に、デビュー前の自分の限られた資金を突っ込むのは、どう考えても割に合わなかった。
50万円の指値、売主の200万円提示、それでもスルー
それでも未練がなかったと言えば嘘になる。私は指値を入れた。50万円で買う、という指値だ。
300万円の物件に50万円。常識的には通るわけがない、捨て値の指値だ。でもこれは私なりの意思表示でもあった。「これだけ難のある物件を、本業を持つ自分が時間をかけて再生して引き受けるなら、捨て値でしか採算が合わない」。当然、この指値は通らなかった。
話はそこで終わらなかった。しばらくして、売主側から「200万円ではどうか」と連絡が来たのだ。300万円が200万円。総額で言えば200万+リフォーム150万=350万円、家賃5万円なら表面17%を超える計算になる。
それでも、私はスルーした。
理由はシンプルで、価格が下がっても、駐車場の弱さも床の読めなさも何ひとつ解決していないからだ。利回りの数字がどれだけ良く見えても、客付けに不安が残り、総額が読めない物件は、安くなったというだけでは買えない。その後この物件がどうなったかは、私は知らない。
学び:低家賃の物件は、リフォームにかけすぎると採算が飛ぶ
この一件で私の中に残った教訓は、ひとつに集約される。
家賃が安い物件は、リフォームにお金をかけすぎると、運用で採算が取れなくなる。
家賃5万円、年間60万円。ここから固定資産税が出ていく。空室期間や小修繕も乗る。仮に入居後に50万円程度の修繕が一度発生しただけでも、その年の収益はほぼ吹き飛ぶ。年60万円の家賃収入に対して、初期に150万円ものリフォームを乗せるというのは、回収に何年もかかるということだ。その間に床下や屋根で想定外が起きれば、計画は簡単に崩れる。
だから私は、運用で稼ぐ物件は**「今この瞬間に稼いでいるか」と「出口で売れる価格か」**を重視するようになった。この2軸の話は「私が物件選びで使っている2つの軸」に詳しく書いている。築50年・駐車場難・水回り全滅の戸建は、運用でも出口でも、この2軸に引っかかった。
実際、私がこの後にデビュー物件として選んだのは、まったく逆のタイプだった。内覧なしのオーナーチェンジを450万円で買った戸建は、入居者が長年大切に使ってくれていて、引き継いだ時点で水回りの工事がほぼ要らなかった。買った瞬間から家賃が入る。リフォームで採算を「作りにいく」のではなく、最初から採算が「立っている」物件を選んだわけだ。
表面利回りの数字と、手元に残るキャッシュは別物だという感覚は、木造アパートの利回り10%が実際いくら残るかを運用してみて、いっそう強くなった。安い・高利回りに見える物件ほど、その裏で何が削られるかを冷静に見る必要がある。
まとめ:見送りも、立派な投資判断
300万円が200万円まで下がっても買わなかった——この判断を、私は今でも正解だったと思っている。
安い築古戸建を前にすると、「これだけ安いんだから、なんとか活かせないか」と前のめりになる。でも、安さと高利回りは、それ単体では買う理由にならない。駐車場のような客付けの前提と、床下のような総額の読めなさを無視した利回りは、絵に描いた餅でしかない。
買った話は派手で、見送った話は地味だ。でも実際の不動産投資は、この地味な「買わない判断」の積み重ねでできている。捨て値でも手を出さない物件を一つ持っておくと、次に本命が来たときに迷わなくなる。私にとって、この築50年の戸建は、そういう物件だった。
「見送る目」を養うために
見送りの判断ができるようになるには、結局たくさんの物件を見て、自分で数字を組む回数を増やすしかない。私も机上の利回りに飛びつかず、捨て値の指値を入れて引く、という判断ができるようになるまでに何件も見てきた。物件の母数を増やすなら、複数社からまとめて情報を取り寄せられるOh!Ya(オーヤ)の一括資料請求が入口として手軽だ。無料で使えるので、届いた資料の数字を自分で組み直す練習台として眺めるだけでも目が肥える。
築古再生の採算をそもそもどう読むか——リフォーム費・表面利回り・出口の組み立てを体系的に学びたいなら、ファイナンシャルアカデミーの不動産投資スクールの無料体験セミナーが選択肢になる。私のように現場で授業料を払う前に型を入れておくと、こういう「安いけど採算が合わない物件」を早い段階で切れるようになる。
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副業禁止のサラリーマン大家 / 法人スキーム実践中
30代の会社員。築古戸建で個人購入 → 妻名義法人で2棟目を取得。 法人融資で3棟分契約解除という授業料を払った経験から、 融資・節税・物件管理の「数字と戦略」をリアルに発信しています。
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